第9章 相互理解には程遠い【白山吉光、歌仙兼定】
とうとう本人達を集め、この状況が危険だと知らせ、仲直りを迫る。
「なぜ、あるじさまと歌仙兼定は反目するのですか?」
「反目ってほど嫌ってないわ。ただ気が合わないだけよ」
歌仙も腕を組みながらではあるものの、頷いている。
「主はいろいろと粗忽だから、その辺りを直してほしいね」
「効率的って言ってほしいわね。文系名刀って触れ書きだったから、もうちょっとおおらかだと思ったんだけど」
「君がもう少し細やかなら、僕だってここまで口煩くしないよ」
交錯する2人の目線は火花が飛び散っているようにも見える。
「……何があろうと仲直りはしないということですね」
埒があかないので、やむを得ず解散した。
「ふぅ……」
「大きなため息ですね。どうしたんですか?」
解決策がないかと似た事例をデータベースで検索していると、鯰尾藤四郎が顔を出した。
「あるじさまと歌仙兼定の仲の悪さを改善できないかと模索しています」
自他共に不仲を認めているのに、改善する気がないのが一番の問題だろう。
先程から過去の事例を調べているが、どの解決策も当てはまらない。
「それは別の本丸の事例ですか?」
鯰尾も横からデータを覗く。
審神者が斬られたり、刀剣男士が虐げられたりとどれも重大事例だった。
白山はそこまで大事だと捉えていたのか。
「そんなに心配することないですよ。どっちかが本当に悪いときは、ちゃんと謝りますし」
「では今までわたくしが見たものは、本気の喧嘩ではなかったと言うのですか?」
「まぁそうですね。……大丈夫ですって!ああ見えて主は歌仙に頭が上がらないんですから」
今までの観察から到底そうは思えない。
「信じてないですね。じゃあ、今度主の頭が上がらない瞬間が来たら呼びますよ。心配ないってことが一目瞭然だと思うんで」
もうすぐその瞬間は来るはずと眉根を寄せている白山に笑いかけ、鯰尾は部屋を後にした。