第8章 本丸にアマビエ殿がやってきた!【髭切、膝丸他】
まずは情報収集だ。
分かっているのは姿だけ。
この絵の妖怪を見ていないかの聞き込みから始めるべきだろう。
桑名江の証言ー
「アマビエ殿?ああ、畑仕事を手伝ってくれたよ。お礼に収穫したキャベツを渡したんだ」
小豆長光の証言ー
「えのもでるとしてじっとしているのは、つらいだろうと、くっきーをやいたらうれしそうにたべてくれたな」
篭手切江の証言ー
「れっすんをしていたら、アマビエ殿が飲み物を差し入れてくれたんです。暑かったのでとても助かりました!」
「……アマビエって、何の妖怪なの?」
聞き込みをするほど、無害なことが証明されるのだ。
何の目的でここに来たのか、全然分からない。
「あーっ!また増えてる?!」
彩鴇が調査を進めている間にもアマビエの絵は着実に増えていった。
写実的に描かれたものや抽象画のようなアーティスティックなものまである。
まるで美術館のようと言えば聞こえはいいが、すべて同じ妖怪の絵なのだ。
こんなにも姿が描かれているのに、まだ実物を見つけられていない。
アマビエの捜索を続けていると、庭に面した廊下に浦島虎徹がうずくまっていた。
床を拭いているようだ。
「……あれ、浦島くん床掃除してるの?」
「ごめんよ、主さん、ちょっと汚しちゃって……」
床の汚れをよく見ると、何かの足跡のようだ。
鳴狐のお供や五虎退の虎のような4本足の動物にしては、足跡のつき方がおかしい。
「ねぇ、これって何の足跡?」
「アマビエさんの足跡だよ。さっきまで亀吉と池で遊んでたんだけど、絵のモデルの時間だって、飛び出しちゃったんだ」
ということは、この先にアマビエがいるかもしれない。