第7章 万にひとつ【秋田藤四郎、小夜左文字】
「主君!何をしているのですか?お願いですから、やめてください!」
信じられないことに、彩鴇がクローバーの群生を踏み潰していたのだ。
その暴挙に秋田は涙目になっている。
「あるじさまは、クローバーに恨みでもあるの……?」
小夜もあなたが望むならと刀を抜くが、顔には戸惑いの色が見える。
「どうかしたのですか?」
騒ぎを聞きつけた江雪左文字が駆けつけてきた。
「2人が四つ葉のクローバーを探してるって聞いて、踏みつけにしてたの」
「……はい?」
前半と後半で話がつながらず、理解が追いつかない。
踏みつけている足を止めずに、一言足りない彩鴇の弁明は続く。
「馬にも踏んでもらおうかと思ったけど、食べちゃってそれどころじゃなかったわ」
「なんと惨いことを……」
私が踏むより効果ありそうなんだけど、と悪びれもなく言う彩鴇に江雪は困惑する。
「こんなひどいことはやめて下さい!」
耐えきれずに秋田が泣き出してしまった。その涙に彩鴇も動きを止める。
「あるじさまに贈りたくて、探していたんだ。演練で他の審神者さまが贈られて、とても嬉しそうにしていたから……」
泣いている秋田の背をさすりながら、小夜が江雪にいきさつを説明する。
小夜も秋田ほどではないが、衝撃を受けた様子だ。
「ご、ごめんね。別にクローバー憎しでやってるんじゃないの」
「じゃあどうして踏み潰しているんですか?!」
「……四つ葉って踏み潰すストレスで発生しやすいから、みんなが見つけられるように……潰してました……」
彩鴇は尻すぼみに言う。
誤解は解けたが、秋田はショックで泣き止まない。
「それでは皆が驚きます。そのようなことをせずとも小夜や秋田は探せますよ」
江雪の口調はゆったりとしてはいるが、有無を言わせぬものだった。