第3章 跳ね駒【大俱利伽羅】
〈大俱利伽羅の苦労話〉
馬に乗るためにはまず馬装から、正しい馬装をしなければ、騎乗者も馬も怪我の原因になる。
彩鴇に一通りの馬装の仕方を教え、やらせてみるものの、鞍の位置が後ろに下がってしまったり、腹帯の締めが甘かったり、馬の顔に着ける頭絡(とうらく)の革ひもを変に留めていたりと結局色々と直す羽目になってしまった。
ようやく馬装の終わった三国黒を練習場に出し、乗り方を教える。
「鐙(あぶみ)は自分の腕の長さに合わせる」
「こう?」
「そこに左足をかけて、左手で手綱と馬のたてがみを掴む。右手は鞍の後端を掴んで、右足で弾みをつけて馬に乗る」
「……左足も右手も全然届かないけど」
まずもって鐙の高さまで左足が上がらない。
鐙を長くしてなんとか左足はかけられたものの、やはり右手が鞍まで届かない。右足もほぼ爪先立ちで、とても弾みをつけられる状態ではない。
乗馬の練習以前の問題である。
これは大倶利伽羅にも予想外だ。
「俺の右肩に左足を曲げて載せろ。合図を出したら足上げしてやるから、鞍に腹這いになって乗れ」
渋々といった様子で大倶利伽羅は、片膝をついて自分の肩を示す。
「上げる時にバランスを崩しても支えられないからな」
「ちょ、怖いこと言わないでよ」
合図を出し、彩鴇を鞍の上に上げる。
幸いバランスを崩すこともなく、馬上まで到達し、身体の向きを変えて鞍にまたがる。
ようやく乗れた。