第3章 跳ね駒【大俱利伽羅】
彩鴇の練習をなんとか終えた後、大倶利伽羅は食堂に来ていた。
遠征を終えた太鼓鐘も食堂にやってくる。
「伽羅、主の乗馬練習どうだった?」
「……散々だ……」
彩鴇が馬に乗れなかったのは本人の身体能力もあるだろうが、一番は体格が小さいからだろう。
腕の長さに合わせた鐙は当然、高い位置になるし、そこに足をかけられるほど、足が長いわけでもない。
腕も大倶利伽羅より短いから鞍の端まで届かなかったのだろう。
自分では気づきもしなかったが、同じような体格の太鼓鐘なら、もっと乗りやすい方法を知っているかもしれない。
「まあ、最初は上手くいかないよな。鐙は長めにしておいて、足をかけるだろ、右手は鞍に届かないからあおり革の部分を掴むんだよ。それで、右足でジャンプすると同時に鞍の向こう端を掴む、あとはジャンプの勢いと腕の力で鞍にまたがるところまでいくって感じだな」
果たして彩鴇にそれが可能だろうか、大いに疑問だ。
「確かに主の細腕じゃ、できるようになるまで時間がかかりそうだよな」
大倶利伽羅の表情を読み取ったのか、太鼓鐘は頬をかく。
しばらくは足上げをしてやる必要がありそうだ。
筋力トレーニングも必要かもしれない。
「伽羅ー、顔がどんどん険しくなってるぞー」
怪我をしては面倒だと引き受けた彩鴇の乗馬練習だが、予想以上に苦労しそうだ。