第2章 安土城での暮らし
翌朝、まだ歩き慣れない廊下を歩いていると前から舞が歩いてくるのが見えた。
「あっ天月ちゃん、おはよう」
「ええ、お早う御座います。昨日は眠れましたか?」
「え、うん、まあね。天月ちゃんは?」
「お恥ずかしながら私は緊張してしまって、眠れませんでした」
困りげに苦笑する天月に心配げに眉を寄せる。
「大丈夫ですか?」
「ええ、心配は無用です」
「そう言えば朝早いけど、どうしたの?」
「三成さんを起こしに行こうかと……
秀吉様にお聞きした時に、三成さんは朝が弱いと聞いたもので」
「そうなんだ……、なんだか以外」
何故かわからないがエールを送られながら、三成の部屋の前で足を止める。
「三成さん朝ですよ? 起きてください」
部屋の中は無音で起きている様子はなく、一言断りを入れ襖を開けた。
「三成さん、起きてください」
規則正しい寝息が聞こえてきて、羨ましげに見つめたが思考を断ち切るように首を振る。
「三成さん、三成さん.…、起きてください三成さん」
悪戦苦闘していると様子を見にきた秀吉が顔を見せる。
「どうだ?」
「それが……」
助けを求めるように秀吉を見ると、秀吉はやっぱりなと言うように息を吐く。
「おい、三成おきろ」
ずかずかと部屋に入って来て三成の掛け布団をひっぺがす。そして頭の下にある枕を抜き取り、三成の顔に投げ落とした。
思わず目を見開いていると、秀吉は罰が悪そうに笑う。
「最近はこんな風に起こしてるんだ」
「……へー」
「うっうーん……」
まだ眠そうな瞳を瞬かせながら視線を彷徨わせる。そして秀吉を視界に入れたその刹那、三成は飛び起きる。
「秀吉様、申し訳ありません!」
「別に気にするな。それにお前を起こしに来たのは、天月だぞ」
三成は呆気にとられたのか天月を見た後、頭を下げた。
「申し訳ありません天月様、せっかく私を起こしに来ていただいたのに……」
「あ…いいえ、気にしないでください」
首を降り三成に言う。
「なんと、天月様はお優しいのですね」
「そっそうでしょうか? そんなことはないかと思いますが」
「いいえ、お優しいです」
「そ、そうなんですね」
戸惑いながら苦笑いを溢す。
「まあいいけど、支度しろよ三成」
「はい」
「……」