第2章 安土城での暮らし
三成を起こし終えた後、縁側に座っていると眠そうにしている舞が後ろを通る。
「あ、お早う御座います。今日は寝不足ですか? 珍しいですね」
ニコリと笑みを向けた天月に驚いたのか、微かにたじろぐ。
「ああ、うん。おはよう」
「……?」
じっと見つめていると言いづらそうに口を開く。
「あの……ごめん。昨日のことにまだ付いて行けて、なくて」
「ふっ。まあ仕方ないですよ」
「う、うん」
「そのせいで寝不足なんですか?」
「いやそのせいじゃなくて……」
「舞さん、私になんでも言ってください。何か力になれるかもしれないですし」
「……うん……じゃあ」
舞は横に座り話始めた。
「昨日の夜信長様に呼び出されて、囲碁の相手をしろって言われて。私が負けたら一つずつお前の体を奪うか、質問に答えろって言われて」
「え、それは災難でしたね」
でしょ? それで私負けちゃって」
「おやおや」
「昨日の夜は質問で終わったけど.…次はどうなるか」
今にも泣きそうに顔を歪める。
「それなら……私がお教えしましょうか」
「え、天月ちゃんが?」
「はい」
三成の部屋で碁石を打つ音が響く。
舞の横では三成が真剣に指導していた。
「天月ちゃん強いね。これなら信長様に勝てそう」
「そう思いますか?」
「うん」
「そう言えば昨日、信長様に呼ばれましたよね? 信長様はなんのご用事だったのですか?」
「いえ、大した用事ではありませんでしたよ」
「ふーん」
「そうですか」
「次は舞さんの番ですよ」
「へ?」
どこか気の抜けた返事に肩を揺らして笑う。
「舞さんは面白いですね」
「え、そんなことないよー」
「そうですね。舞様は面白くて素敵なお方です」
「えー、三成くんまで.…」
「これで私の勝ちですね」
彼女は言いながら白い碁石を置いた。2人は唖然と碁石を見つめる。
「すごい、全然勝てませんでした」
三成が呟く。
「三成くんが勝てないなんて、本当に信長様に勝ちそう」
「いえ、私なんてまだまだですよ」
碁盤の上の碁石は白の碁石が広がっていて、舞の黒い碁石はほとんど残っていない。碁石を片付けながら考え込んでいると、三成が天月に話し出す。
「天月様、次は私がお相手してもよろしいでしょうか」
「私とですか?」
「はい」
「………わかりました」