第2章 安土城での暮らし
部屋に戻り壁にもたれ座り込む。
その顔からは疲労の色が見えており、徐に頭を抱える。
突然部屋の天井から誰かが飛び降りてきて、チラリと男を見て溜息を吐く。
「はあ、もう少し静かに入ってこれないの? お前は」
「ほお……白夜叉、かなり疲れが見て取れるな」
「……お前」
「へえ、お2人とも仲が良いんですね」
もう1人の声に目を見開き、魘魅の横に着地した男が笑う。
「それでいいですよ。そのほうが自然で僕は接しやすいですから、それに僕らは現代仲間じゃないか」
「はあ」
その言葉の後襖が開き、舞が顔を見せた。
「ああ、舞さんも加わりますので……」
「知ってる」
「舞さん入って」
「うん」
天月は伏せていた目を開き3人を見渡した。
「それでなんのようなの?」
「この4人で答え合わせをしようかと思ってね。僕たちが現代から来たと言っても、何かしらの違いはあるはずだから」
「え、現代人!?」
「うん。舞さんは気づかなかったんだね」
「まあそうだろうと思ったよ。こんな頭で生きていけるのか心配」
佐助とは逆に毒舌に言い返す。
「……え、性格が」
「舞さん、彼女は自分とは正反対の性格を演じていたんだよ。まるで潜入操作みたいに……」
暑く語り始める佐助に魘魅が言う。
「そんなことよりも早く確認しあったほうがいいだろう。ここは安土城、誰が来ても可笑しくない」
「……そうですね」
佐助は恥ずかしそうに眼鏡の縁を触り、自分たちのことを話し始めた。
「僕と舞さんは、2015年平成27年から来たんだ」
「俺たちは、2053年令和35年だ」
佐助の言葉に魘魅が静かに告げると、舞と佐助は驚きながら顔を見合わせる。
「え、じゃあ2人は私たちよりも未来から来たってことになるの!?」
「僕たちとは35年後、令和。ちなみに元号が変わったのはいつ?」
「確か….」
「平成の31年」
天月が呟く。
「そうなんだ」
「すごーい! 2人は未来から来たんだ、令和。なんだかかっこいい!」
目をキラキラさせながらはしゃいでいる舞は楽しそうだ。
「僕たちより未来から来るなんて、非常に興味深いなあ」
ぼそぼそ呟きながら考え込む佐助は、頭が良いのだろう。その点舞はこの考えに疎いのか、佐助にみんな丸投げだ。
「……うーん」
真剣な顔して考える佐助を2人は静かに見据えた。