第2章 衣食住揃えば生きていけると思うんだ。
生きていて、気まずい状況に出会う場面が幾つかあるだろう。
トイレ開けたら人が入ってたとか、先生を間違えてお母さんって呼んじゃったとか...
でも、びしょ濡れになっている知り合いと、その後ろの影で笑ってる人達をみて私は何を言えばいいんだろうか。
「うーーーーーーん、よし風呂に入ろうか。」
「は?」
「いや、熱出る前に温まった方がいいでしょ?」
私は持っていた箒を投げ飛ばし、江流の箒も投げ捨てた。
その先にたまたま誰がいて、箒がぶつかろうと私は関係ない。
さも、普通に立っているがここは山の中である。
つまり普通よりも気温が下がっている。
しかも江流は生意気だが一応子供と言われる部類であり、まだ大人に守られる対象である。
嫌がる江流の手を掴み、風呂場まで直行した。
・-・-・-
風呂場はみんな共通で使われているが、温泉ということもあり、常に綺麗な状態を保っている。
入口に赤色の札をかけ中に入り、江流を脱がせると湯の中へ放り投げた。
「あっつ!!何すんだよ!」
人に見られて恥ずかしいのか顔を真っ赤にして文句を言う江流。
しかし、湯の中で緩んだ状態で暴言を吐かれても全く痛くはないのだ。
「はいはい、すぐ出ていくつもりだし、あんたはゆっくり入って今日は休めばいいと思うよ。」
「まじでぶん殴る。」
「多分今殴られても痛くはないな。」
「クソっ、」
さて、私はよく分からない巻物でも読んでるかと、風呂場を出て適当な箱を椅子替わりに座る。
巻物には漢字でよく分からない文章が書かれており理解は出来ないが眺めるだけ眺めている。
10分以上たった頃に江流がホクホクと湯気をまといながら出てきた。
十分に温まったようだか、髪はまだ濡れていた。
そのままこれまた文句を言う江流をスルーし、自室へと向かう。
ふかふかのタオルとまではいかないが、たまたま来た行商人から買い取った布で江流の髪を乱暴に、乾かしていく。
本人から色々と罵倒を受けている気もするが私は今集中してるのだ。
無言で彼の髪の水分を拭き取っていく。
江流の髪は三蔵法師と同じ金髪だが、こっちの方が若々しくて綺麗な金髪だと思う。(別に三蔵法師の髪が年寄りっぽいという訳では無いが...)
あらかた水分を吸い取ったので江流の頭を乱暴に撫でると、江流の言葉を聞かずに部屋を出ていった。
