第1章 出会い
それから数日後、いつもの様に取り巻き達と一緒に朝食へ向かう最中、取り巻きの1人が自慢そうにポケットから銀色の懐中時計を取り出した。
細かい細工が施され、見ただけでかなりの高級品だと言う事が分かる。
「どうしたんだよ、それ」
「父上から誕生日祝いに貰ったんだ。ゴブリン製のオーダーメイドだ。凄いだろう?ほら」
そう言って蓋を開けると、金の針と、文字盤の代わりに宝石がはめ込まれていた。中でも12時の所には大きなダイアモンドがはめ込まれている。――欲しい。リドルの心の底から欲望が湧いて来た。
何とかして手に入れたい。でも今は駄目だ、もっとこいつらの注意が遠のいてからじゃないと……。リドルはその場は皆に合わせてその懐中時計を褒めたが、いつかは手に入れると決めていた。
そしてその時は、案外あっさりと迎える事になった。スリザリン寮のテーブルにつくと、馬鹿な取り巻き達は、すぐ朝食に目を奪われた。
リドルは懐中時計を持っているやつの隣に座ると、サッとポケットに手を入れた。そして懐中時計を掴むと、またサッと自分のポケットに滑り込ませた。
――大丈夫、気づいていない。リドルはついつい口角が上がりそうになるのを我慢しながら、朝食を取り続けた。
しかし、朝食が終わって一旦談話室へ向かう途中、懐中時計の持ち主が、自分のポケットに手を入れ、時計が無い事に気づいてしまった。
リドルは一瞬心臓がドクンと音を立てたが、何も知らないふりを演じた。
「ない!僕の懐中時計が無い!!」
「お前、おおかた大広間に忘れてきたんじゃないのか?」
取り巻き達が相手にしていないのは、リドルにとって良い事だった。そうだ、そのまま笑って終わらせてしまえ。リドルは心の中で唱えた。
しかし持ち主は頑なにポケットをひっくり返して叫んだ。