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【ハリポタ】静かなる鎮魂歌【リドル】

第1章 出会い


 しかしそれより驚いたのは、殴られてなお男が笑っていたことだった。

「へっ……どうだ、これで少しは懲り――」
「おい、笑わせるなよ。まさか今のが本気じゃないだろうな?あれじゃ、か弱い女の子が殴った方がまだマシだ。それともお前は花びらより重いものは持った事がなかったのか?」
「それじゃあ……お望みどおりにしてやるよ!!」

 3人の手が一斉にローブにかかった。黒髪の男も一瞬遅れてローブに手を伸ばしたが、その時にはもう3人組は杖の切っ先を男に向けていた。

「くたばれグレイン、エヴァーテ・スタ――」

 勝ち誇った3人組の顔が、一変して苦痛に歪んだと同時に、彼らの体はまるでおもちゃのように吹き飛ばされた。呪文を唱えたのは向こうの方が早かったはずなのに、地面に倒れているのは黒髪の男ではなくその3人組の方だ。
 リドルには何が起こったのか理解できなかった。ただ呆然と状況を眺めていると、黒髪の男が痛みにうめくリーダー格にゆっくりと近づき、杖を握っている手を靴底で踏みつけた。

「7年もホグワーツに居て、未だに無言魔法も使えないなんて……お前、ここにいる価値ないんじゃないか?」

 男は呪文を唱えられなかったのではなく、唱えなかったのだ。上級生になれば杖の振りだけで魔法を使えるようになると聞いていたが、この男は振りさえもせず、ただ杖を向けただけで3人をまとめて吹き飛ばしてしまった。
 それは今までリドルが目にしたどの魔法使いに、負けずと劣らずほど鮮やかな所作だった。

「さて、どうする?ここで降参して詫びるか?それとももっと悲惨な目に遭いたいか?」
「わ、わかった、降参する、悪かった。疑った俺達が悪かったよ」
「分かれば良いんだ」

 そう言って、黒髪の男は最後に思いっきりリーダー格の男の手を踏みにじると、何事も無かったかのようにその場を後にした。
 リドルは今までこんな男がホグワーツいる事に気づかなかった。だが直感で分かった。この男は「自分と同じタイプ」の人間だと。ただ少々やり方は乱暴だが。その証拠に、リドルはその男が去っていく姿が目に焼き付いて離れなかった。
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