第9章 夜明け前(仮題)
「…という人がいたんですよ~。夜兎族には珍しいですよね~」
と、後日。
阿伏兎にいきさつを話していると、途中から爆笑。
「そりゃ、あれだ、お嬢!!!よくみつけたな!!」
「なんですか阿伏兎、大うけじゃないですか」
「神威の父親だ!」
「えええええええええええ
あの人も人の子なんですねwww」
カワッタお父様でした。話すと普通のお父様なんだけど、なんか、雰囲気というかオーラが。
今までに見たことないような人だった。しかも、本当にすごい人だったらしく、通称『星海坊主』と呼ばれる、夜兎の中にもファンがいるくらいつよ~いお人だったらしい。
時間を巻き戻して、星海坊主と会った当日のこと。
「おんし、おんし!そこのおんし!!」
星海坊主と別れてすぐ、私はサングラスをかけた天然パーマの男性に声をかけられた。
「おんし、那美さんやなかですか?」
「は、はい。そうですけど…えっとどなた様でしたっけ」
会ったことあったかしら、この人。なんかすっごくなまってるけど。
「わしは坂本辰馬いうものじゃき。よろしゅうおねがいします」
そう言って、坂本辰馬なる青年は、私に名刺を渡してきた。
「快援隊…会社のお名前ですか?」
「そうやき。ど~しても那美さんとお知り合いになりたいと思っとったんじゃあ、会えてまっことうれしいっちゃあ」
両手でがっちりと手を握られブンブン振り、豪快に笑う。
「は、はあ…(なぜ私)ここの総督はハシモト氏ですが、私でよろしいのですか?ここで商売をお考えなのでしょう?」
「ちっちっち。快援隊の坂本辰馬さまを侮っていただいちゃぁ困ります。ハシモトさんはただのクグツ、実際は春雨が統治しちゅうが、知っておりますきに」
う~ん。
なんでしょうか、この人。腹にイチモツあるような感じのタイプには見えないけど、何を考えてるんだろう。
「こんなところではなんなので、どこかお店に入りませんか?」
とりあえず、行きつけの中華飯店に入った。