第9章 夜明け前(仮題)
どれくらい眠っていたのだろう。
頭がズキズキする。長時間眠ると決まって頭痛が起こる。
頭を刺激しないように、ゆっくりと起き上がった。
神威に、「しばらく休暇、あげるよ☆」て言われたけども、そんな気分でもなかった。
でも、もう昼も回ってしまったし、今日一日くらい町を散歩してみようかな。
巡回を兼ねて、町に繰り出した。
春雨が駅を占拠しながらも、人の行き来に関してはだいぶ緩い(中央の目も届かないのでけっこう好きにできる)ので、町は観光客が大勢いて、にぎやかだった。
以前より、豊かな町になったような気がする。
いつか地球の江戸を越える、大きな都市になれるような気がする。
ぼんやりと町を歩いていると、一人、異様な風格の男性を発見した。
とにかく、異様なオーラを身にまとった男性。
衣装は夜兎の衣装なのですが、パイロット帽子をかぶった40代くらいの男性だろうか。
色味は地味なんだけど…。
なんだか挙動もおかしいし、声をかけてみることにした。
「あの、観光の方ですか?」
ごく自然に声をかけてみた。
「あ、いや、近くに寄ったもので…」
驚いた様子でおどおどしている。怪しいけども、悪い人ではなさそう。
「すみません、道に迷われたのかな…と思って声をかけてみただけで…」
と、言うと、そのおじさんは少しもじもじしながら、
「この町に、息子がいると…聞いたものでな。別に会う気はないんだが、どんなところかと気になって」
と言った。
なんだか意外だなぁと思った。夜兎族って、身内と縁が薄い人が多いと思っていたので。
「そうだったんですか。もしかして、第七師団の人でしょうか?
私も知り合いがいるのですけども、みんな良い雰囲気ですよ。最初はこの町の人たちになかなか受け入れてもらえませんでしたけど、今はみんな打ち解けて」
と言うとおじさんはとてもうれしそうに、
「そうか。安心した…」
と言って、私にお礼を言うと、すぐに去っていった。