第8章 つかの間の愛
ひどく真剣なまなざしで見ている。そんな土方さんを、私は見ることができなかった。
もう終わりなんだ
私は土方さんのために、土方さんの護りたいもののために、裏切れない。あの絆を断ち切れないのだ。土方さんとの幸せよりもあの絆のほうが大切だと思った…そう言うことなのだ。
「ごめんなさい…土方さん、私は…何も答えられません」
目をそらしたままそう言うと、土方さんに握られた手は、徐々に力がゆるみ、ゆっくりと放された。
そして、長い沈黙の末、
「…わかった」
とだけ言った。
『とても幸せな時間でした。
穏やかな毎日。平和な暮らし。優しい時間。
こんな私に与えてくれて本当にありがとう。
本当に
愛していました。』
一度もお互いに口にできなかった言葉だった。
私はちゃぶ台の上に書置きを残し、土方さんの部屋を後にした。