第8章 つかの間の愛
こうして、私と土方さんの同居が始まった。
すぐに去るつもりだったのに、土方さんの優しさに甘えてしまいました。
もう、一週間になる。
毎日、朝、起きてごはんを作ったり作ってもらったりして一緒に食べて、見送って、ごろごろテレビを見ながら土方さんの帰りを待つ。
春雨のことは、意識的に考えないようにしていた。
「おかえり~」
何度目になる『おかえり』だろう。そして、あと何度この『おかえり』が言えるんだろう。そう思いながら、ホイコーローを作っていた。
「ああ…」
軽く返事をしたあと、ドサッと腰を下ろして靴を脱いでいる気配がする。
「今日ホイコーローだよ~」
「そういえば中華料理、多いな。好きなのか?」
靴を脱ぎ終えた土方さんが上着を椅子に引っ掛けて隣にやってきた。
「長くすんでたところが中華街だったんですよ。そこの住民と仲良くなりまして、教えてもらったんです」
「そうか」
「味見しますか?少し辛いかも」
そう言って私は小さなお皿に数種類乗せて土方さんに渡した。
「いや、うまい」
「…よかった」
お皿を受け取って微笑むと、土方さんは軽く目を細めた。
とにかくお互いに会話が少ない。
でも、見つめ合う時間は長いかもしれない。なんというか、相手の様子が気になるというか。向こうもそうなのかもしれない。
圧倒的に話せることが少ないので、そうならざるおえないのかもしれない。私も、自分のことあんまり話せないのにいろいろ聞くのも失礼かと思って聞けないので、結果的にそうなっているけど、特に困っていることはない。
「この星は、平和なんですね」
二人で食事中、テレビを見ながら私はぼんやりと言った。
「お前の比較対象がわからねえけど…。毎日何かしら事件は起きてる。天人関係は治外法権だからほぼ手がつけられねえし」
「宇宙人のこと、あまんとって呼んでるんですね。知らなかった」
夜兎もあまんとに入るのかな?
「……」
「……」
再び沈黙が流れる。
普通にみんなが知っている知識だったのかな。