第2章 ちぐはぐな街
阿伏兎に傘を渡された次の日から、私は任務の同行を命じられた。
そして、その任務が終わるたびに神威は私に聞く。
「今日は何人やったの?」
「え~…数えてませんでした。20人くらいですかね」
と、私は適当に答える。
でも私はまだ一度も傘を振っていない。できれば振いたくない。
神威は任務になれば私のことなんかかまわず最前線に出るためごまかしがきくのだ。
できるところまでごまかしていきたい。
そんなことを考えていたある日、私たち三人は春雨傘下の北の果て第8シェルターに巣食う盗賊集団『夜原』の一掃を命じられた。
なんでも空港とシェルターの間にある峠に関所を勝手に作って大金をむしり取ったり荷物を奪ったりしているそうだ。
簡単に言えば、「誰の許可でうちのシマ荒らしてんじゃわれぇ」という話ですよ。
今までで1番の遠出。任務は任務でも少しわくわくする。
わくわくしながら部屋のドアを開ければ阿伏兎の背中が見えた。