第8章 つかの間の愛
次の日、クスリを乗せた武留会のトラックが真選組に取り囲まれ、大量の薬物が押収された。
武留会事務所のがさ入れが行われたが、春雨の関与はひとつも確認されなかった。
「てめぇ、何者だ?」
私の言ったとおり、武留会の密売ルートが発見されたため、しばらく拘留されることとなった。
「黙秘でwすみません」
土方さんによる詰問があったが、私もそれ以上は口がわれなかった。
そして、警視庁より私の釈放がすぐにされることとなった。
「いつか、絶対にお前の正体を暴いてやる」
釈放の日、土方さんが私にそう言ったので、
「…ははは、私もそっち側でそのせりふ、言いたかったですねぇ」
と言って笑顔でそう答え、踵を返し歩き出した。
はっきりとわかったことがある。
やっぱり私には海賊は向いてないってことだ。
神威を宇宙海賊王にしたいって夢は変わらずにあるけども。でも、そのために人々を苦しめることはできない、とはっきりとわかった。
だけど、今は、どこに向かったらいいのかわからない。
ぐるぐるとまた悩み始めていると、グイッと突然後ろから腕を掴まれた。
「何に苦しんで、何に耐えてんだ?お前は何を…」
「…黙秘です…」
このときやっと、自分が泣いていることに気づいた。
「あなたにも、守りたいものがあるように、私にもあるのです。でも、どうしても…できない…!」
悲痛な叫びだったと思う。
言った途端、土方さんに抱きしめられた。
「なんだか、よくわからねえけど。誰だかもしらねえけど。泣きながらふらふらされても困るんだよ」
会って数日しか経っていない、よくしらない人の胸の中でひとしきり泣かせていただいた。