第8章 つかの間の愛
「おーい、目を覚ましてくだせェ、お嬢さん?アンタも、クスリやったのかィ?正直にはきやがれ」
目を覚ますと、そこは取調室のような部屋だった。
目の前には警官らしき少年が立っていて、やかんの水を私の頭からかけていた。
「…やってない…」
大量のアルコール、眠剤を飲んだ記憶はある。
ただそのせいで頭がぼんやりとしている。
「ほんとですかィ?やった奴はみんなそう言いますがね!」
そう言って再び頭から水をかけてきた。
「ふっふっふっふ…」
「なんでィ。やっぱり中毒者かィ?おまえさん」
急に不敵に笑い出した私を見て、少年はやかんの手を止めた。
「それを言うなら、やった奴もやってない奴もみんなそう言う、の間違いじゃありませんか?やったって言うような奴はかなり重篤な人だけだと思いますけど…」
水浸しになった髪をかきあげながら、爆笑した。
なんだろう、久しぶりに笑った気がする。
「おい、総悟。やめろ、そいつはクスリやってねえんじゃねえか?」
外で見ていた上司らしき男性が『総悟』さんを止めにきた。
「地球さんの警察さんは手荒なことなさいますね…!ふっふっふ…」
「申し訳ない…、凶悪な中毒者が最近多くて、こんなことを」
そう言って、私にバスタオルをくれた。
牢にはたくさんの心身喪失した重篤な中毒者が入れられていた。
暴れる者もいれば、何かを叫んでいる者もいる。
「屯所の中まで声が聞こえて、すっかり眠れてるやつなんて…総悟と近藤さん、局長くらいなんだ」
目つきの悪いこの男性、土方さんも、すっかり疲弊している様子だった。
「そうですか…わかりました」
私は、ひとつ決心をして返事をした。
「土方さん、クスリの出所、知りたくありませんか?」
「なに?」