第7章 胡蝶の夢
とりわけ歌舞伎町の中毒者数はひどく、夜中には中毒者がゾンビのように徘徊するようになった。
その様子を、私は高層ビルから眺めていた。
(これでいいんだ…。これが私の仕事なんだ)
星を弱らせて、食い尽くす。
今まで同じことをずっとやってきたのだ。自分の故郷に似た、ここにだけ罪悪感を抱くことはおかしい。
すべては、第七師団のため。
高層ビルから降り、民家の屋根の上に立ち街を眺める。
薬を求めて、人々が天を仰ぎゆらゆらと歩いている様子がはっきりと見える。
寒さも痛みも感じない。彼らはもう人ではないのかもしれない。
「お前、何アルか?」
突然背後で声がした。
振り向くとそこには、傘を持った赤い髪の女の子が立っていた。
驚いたことにその姿、その顔は自分のよく知る人物にそっくりだった。
「お前、何者アルか?」
もう一度、聞かれる。
「…」
その声には警戒心と深い猜疑心が含まれていた。
そのキモチを、私は昔同じように感じたことがあった。思い出しておかしくなって少し笑いながら、少女へと振り向いた。
「『やぁ。いい暗闇の夜だね。星がひとつもみえないよ』」