第7章 胡蝶の夢
那美はとても優秀だ。
夜兎にくらべたら戦闘力はとても及ばないと思う。
でも、それは彼女の精神的な部分が大きな差を作っていると思う。
すばやさ、勘のよさ、ポテンシャルは非常に高いと思う。ただ、彼女は優しい、悲しいほどに。それが完全に能力のリミッターになっている。
一度はそれを壊そうと思った。
それは、自分がもっとも憎んできた弱さだったからだ。鳳仙しかり、親父しかり。
だけど、今、俺は那美のそういう部分もすべてそれでいいんだ、と思い始めてしまっている。
…それが一番恐ろしい。
ゆるぎない信念を持って生きてきた。
そして今もそのために生きている。
加えてあの不思議な夢。何度も同じ場面ばかりを見せられる。
ぐらぐらとゆれてしまう己の心を正すために、
できれば
彼女と離れたい…。
「地球へ、任務ですか?」
ある日、私は突然阿伏兎から地球への赴任を言い渡された。
できればアジトに残って、ハシモトの動向を探り、夜原の残党狩りをしたいのですが…
「う~ん。なんでも、上からのお達しらしいよ。お嬢はいたく警戒されているみたいだし」
夜兎には珍しい(一応)ブレーンということで引き離したいという上層部の狙いがあるそうだ。
第七師団、そこまで大した地位にいないのに、いたく警戒されてるんだなぁと思いながらも、断るわけにもいかず地球へ行くことになった。
地球では、以前なぞの二人組のサムライに、麻薬の密売ルートがつぶされてしまったらしく、また新しいルートを作りたいそうだ。
「はぁ。私一人で大丈夫ですかね?新しいルートなんて作れるんでしょうか?」
「地球のお偉いさんとも仲良しだから、万一つかまることがあっても、す~ぐ出られるって」
なんかよくわからないけど、やるしかないか。