第7章 胡蝶の夢
アジト(第8シェルター)に到着後、機嫌の悪い団長は置いておいて、私と阿伏兎は、夜原の残党狩りをすべく情報収集をするために街に降り立った。
もともとここは奴らの収入源だったわけなので、逃避経路の空港・鉄道は完全に春雨が抑えているため、どこかに隠れているはずなのだ。
「まあ、口が堅い奴らだな。街の奴ら、ヤクザみたいなヤツばっかで、治めにくい星だぜまったくよぉ」
いろいろ回ってみるも、誰も口を割らないのだ。
夜原をかばっているのではない。何度も蹂躙された街の人々が見せる、支配者への唯一の抵抗だろう。団結力も並大抵の物ではない。
「…ハシモトの周辺、洗えば何かでるかもしれません」
力ずくで先住民から聞き出すことはきっと可能だと思う、夜原をかばっているわけではないのだから。
でも、それはできれば最終手段にしたい。海賊としては、たぶん悪手なんだと思うけど…彼らの誇りを、最後まで奪いたくはなかった。
「やっぱり…甘いと思いますか?」
「んん?俺はな~んにも言っちゃいないよ」
沈黙する阿伏兎に、なんだか責められている気がして思わず聞いてしまった。
「お嬢が思っているほど、俺は『海賊様』じゃぁないんでね。やりたいようにやればいいさ、目指すところは一緒なんだ」
阿伏兎の、こういうこだわりのないところに、けっこう救われてるなと思った。
「お嬢は、極端でいけないねぇ。まあ、うちの団長様もそういうとこあるけど」
そういう意味で少し似てると言われたけど、あんまりしっくりこなかった。
その後、さすがに私たち二人がハシモトをかぎまわると目立つので、適当に人を見つくろって探らせた。
まあ、もともと真っ黒な人だったので、いろいろ出てきた。正直、何から突っ込んだらいいのかわからないというか…。
とりあえずうまくとぼけられそうなので、本来の目的である夜原の残党だけに焦点を当てて探ったところ、一人見つかると、芋ずる式に何人か捕まえることができた。