第4章 決断の時
「いや〜…阿伏兎さん。
あなたの春雨への交信がうちの船が偶然拾いましてね」
船着き場には見覚えのある船が1つ。
そう、神威らの乗ってきた船と同じ型の夜原の船だ。
それに乗っていたのは、…ハシモトだった。
ハシモトはそう言って、病人である那美を下っ端に運ばせようとしたが神威がそれを拒み自分で背負ってハシモトの船に乗った。
「タイミング良すぎじゃない?」
ハシモトの船の広いホールの隅に、神威、阿伏兎、那美が集まり、阿伏兎がそんなことを言うと、神威はただ黙って監視カメラらしきものをにらみつけた。
「俺にはアイツが主犯に思えてしかたがないんだよね」
声はいつものように穏やかだが、その裏には言いようのない殺気がこもっている。
「でも、表方アイツにカリができちゃったわけだし」
殺されたわけじゃなし、と阿伏兎。
そんな阿伏兎に、神威は「だからこそ嫌」と言った。
そしてまもなくして、ハシモトは医療班を連れて現われた。
医療班の手には注射器が握られており、2人は一気に殺気だった。
「お二方、警戒するのはもっともですが…そちらのお嬢さんが手遅れになられますので…」
そう言って那美を指されては何も言えない。
二人はまず自分たちにその注射をさせて、安全なのを確かめてから那美にもさせた。
「ハシモトめ☆」
注射を打たれながら神威は満面の笑みを浮かべてハシモトのほうを見ていた。
阿伏兎は怖くて直視できなかったとか。