第1章 プロローグ
中は想像していたかっこいい「宇宙船」というよりは無駄なものは一切排除した、まるで工場のような造りだった。
「いたっ」
ドテ。
急に神威が立ち止ったせいで、よそ見をしていた私は神威に軽くぶつかったつもりだったが尻もちをついてしまった。
「なんなんですか…?」
恨みがましい目で神威を見ると、神威は何か考え事をしているようだった。
…マイペースな人だなァ…
私は軽くため息をついて立ちあがると急に眼の前の景色がシャットダウンされた。
「え。」
何が何だかわからないが目の前が真っ白になり体が浮いた。
「ちょっと荷物になっててよ」
どうやら麻袋に入れられて担がれているようだった。
「そそそそんな、…荷物って」
突然のことに動揺してバタバタしていると背後に人の気配がした。
「おやァ?団長。今日は珍しく大きな荷物をお持ちですな」
「やぁ阿伏兎。…ちょっと黒猫を拾ってね」
「ずいぶん活きのいい黒猫さんだねぇ」
黒猫?黒猫!?
「団長がペットなんて飼えるような人だとはど~にも思えないんだけどねぇ。ていうか飼おうとも思わないと思ってた」
「…う~ん。地球に行って、俺も少し変ったみたいだよ」
そう言って袋を逆さにされて中から出された。
…このタイミングで???
私は阿伏兎という青年を見上げるも、大して驚いた表情はしていなかった。
…なんで?
…この人たちにとって、黒猫ってこういうもんなのか???
迷った挙句、私が最初に発した言葉は、
「に、にゃあ」
「ナニソレ」
神威には冷えた声で突っ込まれ、
「おじさんずきゅんときちゃったよ!!」
阿伏兎はツボだったらしく膝を叩いてしばらく笑っていた。