第2章 ちぐはぐな街
~惑星FG~
「では私はこれにて」
そう言ってハシモトは宇宙船から降りて行った。
その姿を見ながら、私はどうしても納得できないことがあった。
でも、「さ~て休むかね」と阿伏兎は早々に部屋に入って行ってしまったので言えず、入り口を見つめたまま固まっていると、不意に神威が声をかけてきた。
「何?何かあるの那美?」
「え…いえ」
一度は首を振ったものの、やっぱり言わずにはいれずに言い出す。
「私、どうにもあのハシモトって人信用できないんです。嫌にすんなり…手のひらを返したように親切すぎるというか」
その言葉に、神威は少し考えるようなしぐさをした後に言った。
「う~ん。
商人ってあんなもんだよ、みんな。俺も信用はしてない。だけど、一応は向こうの利益は提示したわけだし…。ほかに夜原をつぶすための手がかりもないからね」
「そうですか…」
じゃあ仕方ないか、と納得せざる負えなかった。
「心配?」
「…何か胸騒ぎがします」
私が青い顔で言うと、神威はにやっと笑って、
「それを夜兎では『楽しげな予感』て言うんだよ」
左様ですか。
「まぁ、そうですね。私には神威大将軍様がついているんですもんね。なんにも心配することなんてないんでした」
私も神威の笑い方を真似て笑うと、神威は若干首を傾けて笑った。
「ええ、はい。春雨の夜兎が三匹です。
毒にはずいぶん警戒していました」
3人を見送ったハシモトはさっそく夜原に連絡していた。
通信を切った後、ハシモトは椅子に寄りかかりながら満身・渾身の笑みを浮かべた。
もしも夜原が夜兎を殺しそびれれば滅亡、成功すれば春雨の弱体。
おもしろいものが間近で見られそうだ。
どっちになっても私の立場は悪くない。
「本当に、いい取引をさせていただいたよ。夜兎の少年…」