第2章 ちぐはぐな街
そうこうしているうちに町で一番高いガラスの塔の前に辿り着いた。
そして、そこには商人風の小太り黒ぶちメガネの男が立っていた。
「ようこそいらっしゃいました!!わたくし、第8シェルター知事のハシモトと申します」
恭しくあいさつすると、汗を拭きながらガラスの塔に案内された。
どんどんどんどんエレベーターは上空へと昇り、最上階で止まった。
そこにはすでにたくさんのごちそうが並んでいた。
「どうぞどうぞ!遠慮なさらずに!
峠の山賊どもを一掃してくださった英雄殿たち!」
久しぶりの地上食!と、私は箸を持つと、阿伏兎が「まだ食べるな」とその箸をつかんだ。
「単刀直入に言う。
俺はこんな星になんの興味もない。手に入る財源はあんたに全部やる。だから『夜原』の本拠地を教えてよ」
神威がそこまで言ったとき、ハシモトは、目の色を変えた。
「それはそれは…また…なぜ私が盗賊夜原だと?」
すると今度は私から奪った箸を咥えた阿伏兎が答えた。
「峠を通る奴らのちっさな収入源より、春雨の手の届かない町の税収のがい〜〜い収入源だと思うけどね。
峠の奴らは目くらましかなんかだろ」
そっか。…て、ことはあの問題の答えはこのハシモトなんだ。
「そんなに悪い条件ではないと思うんだけどね。
こんな偏狭な土地に回されるってことは幹部ではないんだろ。ここの収入はあんたに全部やるって言うんだからさ」
テーブルの前で頬杖をついた神威はそう言った。
「ははは、夜原を裏切れと申しますか。…そうですね、いいですよ。まさかこんないい取引ができるとは…」
「じゃあ、商談成立ですね!!」
よっし、これでごちそう!と阿伏兎の箸をつかもうとした瞬間、ガシャーーーンと激しい音を立てて、背もたれにもたれたまま神威は足でテーブルを真っ二つに割った。
「じゃあとっととこのくさい飯片づけてよ。
言っておくけど夜兎はこんな毒じゃ死なないよ」
神威はにっこり笑ってハシモトに言った。
毒入り!???
私はパッと箸から手を離した。