第1章 空焦がれ、忍び愛
ケニーが酒場の外へ吹っ飛ぶ。
リリーは酒場の窓に椅子を囮に投げて飛び出し、外で待ち伏せしていたケニーの部下を容赦無く刃で切り裂いた。
「ごめんね!痛い?やっぱ痛いよねー?!」
言葉とは裏腹に少しも悪びれてないリリーに、周囲の敵は青ざめる。
リヴァイの方へ向かおうとした途端、まだ倒れているケニーがリリーを呼び止めた。
「リリー…!!!」
「もう、何?!私急いでるんだけど!」
「こんな状況で言う事じゃねぇがッ!……リヴァイはお前の兄貴じゃねぇ!クシェル・アッカーマンはお前の母親じゃねぇんだ…!!」
「………は?何、言ってんの?」
「俺がお前らを引き取った時、クシェルの隣部屋に居た娼婦が出てきて言ったんだ…!お前を頼むってなぁ!おおよそ、地下に捨てられそうになった赤ん坊のお前を哀れに思ったクシェルが面倒を見てたんだろう。」
「……そんな訳ないでしょ!…ってかいい加減部下の攻撃辞めさせてよ!!」
「その娼婦の髪も、赤色だった…!」
「……!!!」
「リヴァイは知ってる筈だ。お前を引き取った頃のリヴァイは、もう物心がついていたからな…。」
その瞬間、何も知らないリヴァイが敵を蹴散らしながらその場にやって来た。
「リリー、何してやがる!早く来い!」
「お、兄……。」
リヴァイはリリーの腕を引っ張り、ケニーから離れる。
リリーは空中を飛びながらも、先程ケニーの言った言葉が頭から離れなかった。
「一旦エレンとヒストリアは諦める。こっちの考えは筒抜けだ。」
「ねぇお兄…。」
「あ?っておい、頬切れてんじゃねぇか。」
リリーは頬の血を拭ってくるリヴァイの手を跳ね除けた。
「っそんな事どうでもいい!!」
「リリー…?」
リリーの様子がおかしい事に気付くリヴァイ。
「お兄は、私のホントのお兄じゃないの………?」
リリーは無意識の内に問い質してしまっていた。
「…ッ!!!」
「何その顔…ほんと、なの…?」
「……。」
「答えてよ、お兄…。」
「…っとにかく、一旦引くぞ!」
リヴァイは急な質問に対処出来ず、何も答えられなかった。