第1章 空焦がれ、忍び愛
二人に容赦無く散弾を打ち込むケニー。
「お兄!馬車が行っちゃう!こっちは私に任せて!」
「それじゃあお前が…!」
「大丈夫だから!お兄は馬車を追いかけて!早くっ!!」
待ち伏せしていたケニーの仲間の散弾を避けながら、リリーはリヴァイに叫ぶ。
「…ックソ!死ぬんじゃねぇぞ!」
リヴァイは馬車を追いかけ、リリーはケニー達数人の制圧部隊を引き付けた。
地面スレスレで避けるリリーの頬に、瓦礫の破片がかすめる。
「…いてっ!」
リリーは近場にあった酒場の中にアンカーを刺し、カウンターの裏側に身を潜めた。
「ちょっと失礼!」
突如戦場と化した店内に、周囲の客達がザワザワと騒ぎ始める。
「あれ…リリーじゃねぇか?ほら、リヴァイの妹の…。」
「ひぃ…!!」
怯える様に見てくる店主に、リリーはシーッと人差し指を立てた。
「ここに隠れている事はバレバレだぞリリー?」
酒場に逃げたリリーを見たケニーが、店内に入って来る。
「久しぶりだね、親父。」
「まだ親父って呼んでくれんのか?泣けるねぇ。」
「ま、育ててくれたのは感謝してるからね。」
リリーは護身用として酒場に設置されている銃を手に取ると、酒瓶をケニーの姿が映るように動かした。
「けどなぁリリー…。お前の親父は教えなかったか?こんな場所に逃げ込むなってな。現に今お前は、袋のネズミだぞ?」
「あぁ、すっかり忘れてたー。ってか親父、どうして憲兵なんかにいるの?」
「棒読みかよ…それは言えねぇな。子供は子供らしく親の言う事を聞いてりゃいい。」
「もう子供って歳でもないけどね。」
「あぁ、それもそうだったな!…そう言えばおめぇ、灼熱の悪魔って呼ばれてるらしいな。」
「勝手に呼ばれてるだけだよ。お兄の方がよっぽど強いからね。」
「お兄…?そりゃリヴァイの事か…?」
「それ以外、誰がいるんだよっ!!」
「…ッ!!」
そう言うとリリーは、ケニーに銃口を向けライフルを撃ち放った。