第1章 空焦がれ、忍び愛
そんないつものように雑談をしていた時、リリーがいきなり床に倒れこんだ。
「……リリー?てめぇらそこをどけ!!」
「うわっ!ど、どうしたんだよ急に…。」
リリーは人一倍身体が弱かった。
この地下街は地上と比べ、空気がかなり悪かったのだ。
息苦しそうに倒れ苦しむリリーを、リヴァイはもう何度も見てきていた。
「ゼェ…ゼェ…お兄…だ、いじょうぶ…だから…。」
「クソッ…、喋るな!」
リヴァイは慣れたように薬と水を口に含み、リリーの口に流し込む。
「ゴホッ…ぁ、りがと…で、も、吐く…うえぇっ…。」
リリーは高熱と息苦しさで、リヴァイの服に嘔吐した。
リヴァイはそんなものにも目がくれず、リリーの背中をひたすらさすっている。
イザベルとファーランは初めて見る光景と、リヴァイの異様な姿に驚いた。
「おいおい待てよリヴァイ…リリーには持病があったのか…?」
「兄貴!!リリーは大丈夫か?!あ、あと服も…!その薬で治るんだよな?!」
「うるせぇ!黙ってろ!」
二人は口を噤むしか無かった。
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「取り乱して悪かった…。」
「いや、いいんだ。それより、リリーの様子はどうなった?」
「俺はあんなリリー初めて見たぜ!あ、兄貴もだけどな…!」
「……今は落ち着いてる。今回のはまだマシな方だ。」
「そっか…まぁすぐに良くなるだろ。薬も奪ってくりゃ済む話だしな!」
その瞬間、ファーランが床から浮いた。
リヴァイが首根っこを掴み、上に持ち上げていたのだ。
「ガハッ……」
「奪ってくりゃ済む話だと…?あれはそんじゃそこらじゃ手に入らねぇ、地上で手に入れた薬だ。地下に住みつくゴロツキがどうやって地上に奪いに行く?お前ならあれを簡単に手に入れられるのか?」
リヴァイはファーランを床に叩き付けるように、抑えていた首元を離した。
「ゴホッゴホッ…」
「あいつの病気はこの汚ねぇゴミ溜めに居る限り治らねぇ。次にすぐ治るみてぇな事をぬかしやがったらお前を早急にアジトから追い出す。分かったな。」