第1章 空焦がれ、忍び愛
冬の地下は、飢えと寒さで死に行く人々が数え切れない程居る。
そんな地下で、もうしばらく何も口にしていないであろう痩せ細った子供が二人、娼館にある一角の狭い部屋で放置されていた。
兄の方の目には、光が灯されていない。
兄妹の目の前で知らない男達に抱かれ続けた母親は
いつの間にか冷たくなっていた。
「…おなかすいた…。」
兄よりまだずっと幼い妹は、母親が死んでいる事に気付いていない。
小さいリリーを温めるかの様に抱き締めるリヴァイ。
唯一母親から残されたのはその名だけだった。
食べ物も着る物も、もう何も残されていない。
そんな兄妹に、一人の男が訪ねて来た。
ーーー死んでるーーー
母親に用があると悟ったリヴァイは、そう一言、訪ねて来た男に伝えた。
その男はケニーと名乗った。
行く宛の無かった二人は
この地下で生きる全ての術を、ケニーから教わった。
強盗、殺人、なんでもやった。
強者は勝者、弱者は敗者。
やらなきゃ死ぬ、そう教わったからだ。
「ねぇお兄、こいつ嫌い。殺していい?」
「馬鹿か、お前は手を汚すな。俺がやる。」
いつの間にか、リリーの澄んだ瞳も
暗く、深く染まっていった。
しばらく経った頃、ケニーは姿を消した。
何年か経ち、二人はアジトを設け仲間を増やした。
イザベルとファーランも、丁度その頃に出逢った。
「リリー!!兄貴の掃除について何か言ってくれよ〜。」
「アンタいつもドロドロでアジトに帰って来るじゃん。それじゃお兄も怒るよ。」
「ちぇっ。リリーには何も言わねぇくせに何でいっつも俺だけなんだよ…。」
「うるせぇイザベル。とっととその汚ねぇ体洗い流して来い。」
「はは…リヴァイはリリーに甘いからな。ま、こんな可愛い妹を放っておけねぇ気持ちも分かるけどよ!…っておい!!仲間にナイフぶっ刺そうとする奴が居るか?!」
「てめぇが気持ち悪ぃ事言ってるからだろうが。」
「お兄危ない。ナイフ仕舞って。」
「あぁ分かった。」
『言う事聞くのはやぁぁっ!!』
四人はいつも一緒だった。