第1章 空焦がれ、忍び愛
「行こう!もう、お兄って呼ばない様にしなくちゃねっ…。」
「……ッ!!」
必死に笑顔を作り立ち上がったリリーに、リヴァイはもう何も言えなかった。
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何故だ?
どうしてこうなった
兄のフリをしてでも
お前の隣には俺が居て
俺の隣にはお前が居て…
俺はそれだけで良かった
多くは望んじゃいねぇはずだ
こんなクソみてぇな状況でも
お前と一緒ならもうどう転んでも良かった
おい、どうしてジャンの横で笑っていやがる
俺だけにしか見せない顔を
俺だけしか知らないリリーを
もう一番近くで見る事さえも許されねぇのか
ジャンはお前に好意を寄せている筈だ
あぁ…そう言えばファーランもそうだったな
なぁファーラン
お前は俺を憎んでいるか?
兄のフリしてお前からリリーを遠ざけた
お前は何か勘付いていたみたいだったが
俺は結局何も言えないまま、お前はこの世を去った
俺は、リリーをーーー
はっ……もうどうなってもいいな
どうせ失う物なんて俺にはねぇ
「……?!」
気付けばリヴァイは、リリーの腕を強く握っていた。
焚き火を囲って食事を摂っていたメンバーが異様な空気に唖然とする。
「おにッ…兵、長?どうしたの?」
「お前、一瞬躊躇っただろ。」
「へ?」
「ケニーの部下がまだ息をしていた。上司であるお前が殺すのを躊躇ったらこいつらはどうなる?」
咄嗟に思いついた嘘。
「息してた…?は?そんな訳ないでしょ。全員真っ二つにしたんだから。」
「ウェェッ…」
「はっ!アルミン、ごめん!」
アルミンが感触を思い出し、嘔吐する。
ハッと思い背中をさすろうとしたリリーだったが、お構い無しに引っ張ってくるリヴァイに、それは敵わなかった。
「来い、鍛え直してやる。」
「リリーさんが殺す事を躊躇う?そんな事あんのか?」
「そうですよ兵長!アナタお兄さんなら分かるでしょう?!リリーさんはアナタと一緒で極悪非道じゃないですかぁ!!」
「それに今の怪我なら…リリーさんに負ける可能性の方が高い。…ので、喧嘩は明日するといい。」