第1章 空焦がれ、忍び愛
「行くよ、行くからジャンを怒らないで。てか怪我してたの?これ、私のジャケット着て。」
上を纏っていないリヴァイに、リリーは自身のジャケットを渡した。
リヴァイより少しサイズは小さいが、何も羽織ってないよりはマシだろう。
「チッ。…いい。お前の服が汚れるだろうが。」
そう言いながら森の中に入っていくリヴァイとリリー。
健気なジャンは、リリーの為に誕生日会の準備を始めるのだった。
「で?」
リリーは横倒れになった樹木に腰を掛け、リヴァイの目を真っ直ぐ見つめた。
「奴から聞いた話を真に受けてんのか?」
「真に受ける?あんな状況で冗談が言える訳ないじゃん。」
「そう言う奴だろ。お前も知っているハズだ。」
「じゃあ、この髪色は?」
「…ッ!」
「どうやって説明するの?」
幼いリリーも、クシェルの髪の色くらいは覚えがあった。
リヴァイと同様、黒色の髪だった。
「もういいよ…。私も変だとは思ってたんだ…。お兄は黒髪なのに、私の髪は真っ赤なんだもん。全部話してよ。私なら、大丈夫だから…。」
フッと何もかもを諦めるかの様に笑うリリー。
(違う、そんな顔をさせたい訳じゃねぇ)
リヴァイは覚悟を決めた。
「……お前がまだ小さい時、俺達が住んでいた部屋にお前の母親が訪ねて来た。」
「………っ…。」
「面倒が見れねぇからと言って、まだ生まれたばかりのお前を置いてったんだ。」
「ずっと……。」
ずっと知ってて黙っていたの…?
リリーは涙が止まらなかった。
母親に捨てられたからという理由では無く、その事をずっと誰にも言わず背負って来たリヴァイに、心が押し潰されそうになったのだ。
思い返してみると、リヴァイから妹と言われた事は一度も無かった。
「黙っていて悪かった…。俺は…」
「ご、めん…。嫌だったよね…血も繋がってないのに…。私の存在がずっと…っお兄を縛ってたんだよね…。」
「違う!そうじゃねぇ!俺は、お前のことが…ッ。」
その時、遠くからコニーが二人を呼ぶ声が聞こえてきた。
そろそろ夕食の時間なのだろう。