第3章 会いたくて
ミズキ君にとって私は、たくさんいるファンの中のひとりに過ぎないんだ。
そんなことを思っていると涙がポロポロ溢れてきて、ネオン街の光が歪んで見えた。
「あれ?おねーさん何で泣いてんの〜?」
「男に振られたとか?俺らが相手してやろーか?」
まただ...本当に、この街の嫌いなところ。
「離してください!」
いつでも都合よく助けが来るなんて思わない。
ちゃんと自分の力で逃げなきゃ。
「おい、調子乗んなよこのアマ」
「こいつ、この間琉星達が言ってた奴じゃね?ほら、スターレスのミズキとか言う奴が助けた女」
あの日の出来事は、闇の住人達の間で噂になっていた。
「へぇ、こいつがねぇ...。ヤっちまえば、スターレスんとこの社長もデカい顔出来なくなんのかね?」
「...そしたら、俺らの店の売上も少しは上がるかもな」
ニヤリと笑う男達の目には光がなく、むせるほど煙草と香水の匂いが空間に充満している。
「...私ひとりをどうにかしたって、スターレスが動くわけないじゃない!そんなことでスターレスから売上は奪えない!皆んな毎日血の滲むような努力をして...最高のステージを作っているお店なんだから!」
こんなことを言える自分に、私が一番驚いている。
でも、必死だった。とにかく必死だった。
こんな状況なのに、スターレスを...ミズキ君を守らなきゃって思ったんだ。
「なんだ、特別な女じゃねーの?つまんねーな」
「ヤク漬けにして、風俗売り飛ばすぞ?あ?」
胸ぐらを掴まれ、手足ががくがくと震える。
しかし、視線だけは逸らさなかった。
こんな奴らに負けない...!
キッと睨むと、男の手が振りかぶるのが見えた。
殴られるっ...!
そう思ったその時。
バシッ!!!
男の手は私の頬すれすれで止まっていた。
「ハァッ、ハァッ...ッたくてめーは何時も危なっかしーんだよ!!」
「ミ...ズキくん...?」
どうして...?
そう思った時には、男の身体は壁に打ちつけられていた。
「スターレスの客を汚して評判落とそうって魂胆か...?ハッ、さっすがクズの中のクズ。考えることが違ぇな!!」
バキッ!!!
鈍い音と共にミズキ君の拳が男の頬にめり込む。