第3章 会いたくて
公演が終わり、いつも通り余韻に浸っていた。
どのチームもちゃんと自分達の色があって凄い。
特にミズキ君が以前所属していたチームPは、全体的にアイドル色が強く皆王子様の様に見えた。
チームPに居たミズキ君も見てみたかったな...。
そんなことを思っていると、突然背後から「おい」という声が聞こえた。
聞き間違える筈が無い、大好きな声。
「何で今日来てんだよ。チームBは明日だろ?」
「ごめん...でも明日も来るよ!今日はミズキ君がホールで働いてる姿も見たくて...」
初めて見る怒った顔に、少し戸惑ってしまう。
「ハァ...お前そんなに通って、金大丈夫なのかよ」
呆れた様にため息をつくと、屈んで視線を合わせて来た。
「他のチームに目移りなんかしやがったらタダじゃおかねーからな。...お前は俺だけ見てりゃいーんだよ」
くしゃくしゃと私の髪を撫でると、フッと笑みを浮かべた。
「にしても、お前は本っ当ーーに俺が大好きだな。嬉しいけどよ。...無理はすんなよ」
それだけ言うと、困った顔で去っていき空いたテーブルの片付けを始めた。
公演が終わると、そのまま帰る人、朝まで飲む人に分かれるのだが、今日は殆どのお客さんが帰っていた。
私は勇気を振り絞って声を上げた。
「私、ミズキ君しか見てないよ!ミズキ君のチームBを応援したい...。お金なら、ちゃんとバイトしてるから大丈夫だもん!」
本当はカツカツの貧乏大学生だけど、なんだか悔しくて強がってしまった。
「な...!そんなムキになんなよ。心配してやってんだろ!」
バツの悪そうな顔で頭を掻く。
「そんな心配してもらわなくたって、平気だよ私!...ミズキ君は私の気持ちなんて何も分かってない!」
違う、こんなことが言いたいんじゃないのに。
「...やっぱり、明日は来るのやめるね。じゃあね!」
そう言い切ると、フロアを飛び出した。
「おい!舞美!!」
何やってんだろ、私。
ミズキ君は心配してくれたのに。
お店のキャストに恋して勝手に怒って、完全に痛いヤツじゃん。
...わかってるよ。この恋が結ばれないことくらい。
ミズキ君は私のことをお客さんとしてしか見てないし、お客さんとして心配してるだけ。