第2章 最悪の出逢い
Side Mizuki.
今俺は、俺が俺を信じられねぇ。
一人の客に対して、何特別な感情持ってんだよ。
肩までのサラサラの黒髪。
何も知らなそうな透き通った瞳。
ステージ上から見ても、他の客とは違う確かな存在感を感じていた。
「あーあ、俺のなけなしの1万円...」
何カッコつけてんだか...俺ってダッセェ。
まさか、帰り途中に襲われてるなんてな。
「あのホスト共、次会ったらあんなもんじゃ済まねぇ」
俺は自分の店の客を守っただけだ。
ただ、それだけだーーー...。
そう自分に言い聞かせ、寮への道を急いだ。
繁華街生まれ路地裏育ち。
此処から何が何でも這い上がらなきゃなんねぇ。
借金なんかさっさと返して、俺はデカい男になるんだ。
煙草と酒の匂いがする臭い道に、舌打ちをして唾を吐いた。