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狂愛-BLACK LOVER-

第2章 最悪の出逢い


「あの...ありがとうございました!」

差し出された手を掴み、真っ赤な顔を隠すように頭を下げた。

「チッ...礼はいい。早く帰れよ。どこ住んでんだ?」

何故か舌打ちをされたけど、目が合うとやはりドキドキしてしまう。

「鷺ノ原...です」

「鷺ノ原ァ!?クソ遠いじゃねぇかよ!」

電車あんのか!?という問いに、首を横に振って答えた。

「クソッ、何で途中で帰んなかったんだよ...。俺らの公演最後まで見てる時間無かっただろ!?」

「ごめんなさい...!その、あまりにもかっこよくて」

...あれ、何も返ってこない。
チラッとミズキ君の顔を見ると、口を片手で覆って耳まで真っ赤になっていた。

え、何でミズキ君が赤くなるの!?
こっちまで顔から火が出そうだよ...!

「ば、馬鹿野郎!そんなこと聞きたかったわけじゃねーんだよ!...あぁクソッ!お前と居ると調子狂う!」

いきなりバッと手を掴まれ、大股で歩くミズキ君に必死で付いていく。

「あ、あの、何処に行くんですか!?」

「タクシー乗り場だよ!若ぇ女一人でこんな街歩いてたらあぶねーっつーの!」

不器用な優しさに、私の心臓はもう壊れてしまいそうだった。

タクシー乗り場に着くと、ミズキ君は運転手さんへくしゃくしゃの1万円札を差し出した。

「おっさん、これで鷺ノ原まで行けっか?」

「鷺ノ原ね!大丈夫だよ〜。乗るのは嬢ちゃんだけかい?」

「は、はい!あの、ミズキ君、こんなことしてもらう訳には...」

言いかけた言葉は、ミズキ君の大きな手によって塞がれた。

「うるせえ。次からは時間に気をつけろよ。...また来いよ。待ってるからさ」

ぶっきらぼうに言うと、運転手さんへ頼むわ、とだけ呟きドアを閉めた。

遠くなっていく背中を、いつまでもいつまでも見続けていた。

「おっとこまえな彼氏だねぇ〜」

運転手さんはニヤニヤしながらミラー越しに言ってきた。

「そ、そんなんじゃないんです...!」

私は鳴り止まない心臓を必死で抑えながら、ミズキ君の顔を思い出していた。

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