第2章 最悪の出逢い
「ハァッ、ハァッ...何処なのよここは...!」
おかしい。先輩と歩いて来た道を戻っているだけなのに。
何度辺りを見回しても、ホスト、ホスト、ホスト...ホストクラブしか見えない。
「お姉さん、初回でどう?サービスするよ〜」
「終電無くなったんでしょ?女の子が一人で危ないよ〜」
走り疲れてうずくまっていると、見るからにチャラそうなホスト2人が話しかけて来た。
時計を見ると既に0時を過ぎている。終電はとっくに無くなってしまった。
「ほら、行こうよ。すぐそこだからさ」
腕を掴まれ、強引に引っ張られる。目を見れば明らかに普通では無くて、私は恐怖に声を上げることも出来なかった。
「おい、この女声出さねーぞ」
「ついでに裏でヤっちまうか?結構顔かわいーし」
顎を掴まれ唇が近づくと、堪えていた涙が溢れてしまった。
助けて...!
そう思った瞬間。
ドカッーーー!!
顎を掴んでいたホストの体が宙を舞い、地面へと叩きつけられる。
「...女一人相手に何してんだてめぇら。そんなことしなきゃ客捕まえらんねーのか?ダッセェな」
鋭さを増す金色の瞳。
フードから覗く銀とオレンジの髪。
間違いない。
ステージ上の初恋相手が、そこには居た。
「お前、誰だ?」
腕を掴んでいたホストが問いかける。
「...てめぇらと同じ、女を餌にするただのクズだよ」
そう言った瞬間、ホストのこめかみに青筋が浮かぶ。
「テメェ...!!」
殴りかかろうとしたホストの顔へ、目に見えぬ早技で蹴りが飛んだ。
「カハァッ!!」
辺りに血が飛び散り、抜けた歯が転がる。
「うへぇ、汚ねー...このスニーカー気に入ってたのによ」
嫌そうな顔でホストに向かって唾を吐く。
「でも、良い練習になったぜ。ありがとよ、ゴミクズ野郎共」
笑った顔からは八重歯が覗く。
「...ミズキ君...?」
呟いた私を、金の瞳が射抜いた。
「こんなとこで座り込んで何考えてやがる!襲われてーのか!?」
屈みこんで視線を私へと合わせる。
「お前、今日ダチと二人で来てた奴だろ。悪いこと言わねーからさっさと帰れ」
ほら、と手を差し伸べてくれた。