第1章 プロローグ
Hey...群れるだけの脳の家畜
ざわざわと騒つく客席。
ミズキの声...? ミズキだ...!
ミズキという名前が連呼される中、幕が上がる。
皆殺しだ!!!
鋭く尖る金の瞳。
無造作にセットされた銀とオレンジの髪。
口元には八重歯が覗き、攻撃的な言葉を紡いでいく。
その姿はまるでーーーー狂犬。
「ミズキ、こういう感じになったんだ...結構いーじゃん」
ステージを見つめる先輩は、懐かしむような複雑な表情で微笑っていた。
一曲目が終わり、深く息を吐いたミズキ君と...目が合った。
「よう皆、久しぶりだな。元チームP所属だったミズキ...新生チームBリーダーになって帰って来たぜ」
きゃあああああーーー!!
沸き上がる歓声と拍手。
「ヘナチョコチームなんか目じゃねぇ...俺らはトップに立つからよ!応援宜しくな!!」
ニカッと笑った顔は言葉とは裏腹に可愛くて、私は一瞬で虜になった。
世界中探しても、こんな魅力的な人居ないーーー...。
それからの時間はあっという間で、私は震える手を胸の前で組むことしか出来なかった。
「舞美ちゃん?舞美ちゃーん?」
先輩に揺さぶられ、ハッと我に帰る。
「もしかして、“推し”見つかっちゃった?」
悪戯な笑みを向けた先輩は、私の肩をポンポンと叩いた。
「そっかぁ〜〜。舞美ちゃんはミズキみたいなのが好みなのね〜。意外だね〜」
ニヤニヤが止まらない様子の先輩は、私の耳元で囁く。
「また来ようね♪...終電、大丈夫?」
終電という言葉に顔が青くなり時計に目を向けると、丁度最後の電車が発車する10分前だった。
「わあああ!やばいいいいい!!」
焦る私を他所に、先輩は更にお酒を注文する。
「私は朝まで飲むことにするから、終電無くなっちゃったら戻っておいで〜♪」
...ダメだ。すっかり出来上がっている。
「...今日はありがとうございました!お先に失礼します!」
吐き捨てるように言ってしまったけど、先輩は対して気にしていないようだ。
待ってるね〜!という言葉が耳を横切ったが、構わず走り出した。