第4章 急展開
「お言葉に甘えて、お借りします」
ペコリと頭を下げると、何故か凄く笑われた。
「急にスゲェ他人行儀じゃねーか。安心しろ。何もしねーから」
...そういう風に言われると、返って意識してしまう。
「もうっ...ばか」
「あ?なんか言ったか?」
ピシャリ!
背中越しに睨まれた気がしたけど、脱衣場の扉を閉めて遮ってしまった。
洗面台には、色々な種類の香水、ワックスやスプレーが並ぶ。
ぷっ、歯ブラシまでオレンジ色...。
こだわりように、少し笑ってしまった。
...なんか私、変態っぽい?
慌てて服を脱ぎ、バスルームへ入る。
わぁ...綺麗にしてるんだ。
部屋が少し散らかり気味だったから、お風呂はどうなんだろうと思っていたけど...隅々まで掃除が行き届いていた。
シトラス系の香りがするボディソープで体を洗い、クール系のシャンプーで髪を洗う。
普段ミズキ君が使っているものを使っただけで、なんだかミズキ君の香りに包み込まれるような感覚に陥った。
やっぱり私、変態かも。
ミルクの入浴剤が入れられた湯船へ肩まで浸かる。
「ふぅ〜〜〜、気持ちいい〜...」
湯船なんていつぶりだろう。
一人暮らしを始めてからはシャワーだけで済ませちゃってたから、3ヶ月ぶりくらいかな?
疲れた身体へ温かいお湯が染み渡る。
...今日ミズキ君が来てくれなかったら私、どうなっていたんだろう。
私のせいで脇腹、蹴られてた...。
2回も助けてもらって、ミズキ君が喧嘩が凄く強いことはよく分かった。
だけど、あれは相当痛かったよね...。
後でもう一度謝ろう。
そう決めてふと鏡を見ると、大事なことに気がついた。
「やば、メイク落としてないじゃん...」
メイクを落とさずに湯船に浸かってしまったことに心の中で謝りつつ、脱衣場にあるバッグにメイク落としシートが入っていることを思い出す。
ついでに歯も磨いちゃおう。
少し前に先輩の家に泊まりに行く際に買ったお泊りセットが、バッグに入れっぱなしになっているのだ。
バスタオルで軽く身体を拭きながら、バッグの中を探す。
「あ、あったあった」
歯ブラシとメイク落としシート、トラベル用スキンケアセットを見つけた時だった。
ガチャ。
「おい舞美、下着は妹のやつ使っとけ...」
脱衣場の扉が開いた。