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狂愛-BLACK LOVER-

第4章 急展開


繁華街の喧騒から少し離れた住宅地。

そこにミズキ君が住むマンションがあった。

「綺麗な部屋じゃねーけど。シャワーと服ぐらいは貸してやれっから」

男達に引っ張られた服は所々破れていて、確かにこのまま外を出歩ける格好ではなかった。

「もう歩けるか?チームBの連中は皆んなここに住んでっから、見つかんねーように俺の後ろ歩いとけ」

オートロックの番号を入力すると、ガラスの自動ドアが開いた。

「ミズキ君、本当にいいの?もし見つかったら...」

「余計な心配すんな。黙ってついてこい」

ミズキ君の背はそんなに高い訳じゃないけど、150センチの私を隠すのには十分だった。

どうして、ここまでしてくれるんだろう。
私はただのお客さんで、ファンの一人に過ぎないのに...。

エレベーターに乗っている間、ずっとそんなことを考えていた。

8階で止まり、ミズキ君が私の手を取る。

「ほら、危なっかしーから繋いでろ」

ぎゅっと握られた手から、ミズキ君の熱を感じる。
ドキドキが治らない。

私、勘違いしちゃうよ...。
鳴り止まない鼓動を聞かれないようにと、胸に手を当て落ち着け、と心の中で言い聞かせた。

805roomと書かれた部屋の前で鍵を取り出すと、ミズキ君は慣れた手つきで開けていく。

「入れよ」

「お、お邪魔します...」

男の人の部屋に入ることすら初めてなのに、ましてやそれが好きな人でファンがたくさんいるアイドルだなんて...!

緊張しないはずもなく、私は玄関先で立ち尽くしてしまった。

「何やってんだ?靴脱いで入れ。その辺座って待ってろ」

ミズキ君はそう言うと奥の部屋へと入っていってしまった。

清潔感溢れる...とは正直言えないけど、玄関先には大量のスニーカーが並び、壁には色々な種類のスケートボードが飾ってある。
世界的に有名なラッパーの大きなポスターが貼られ、家具はあまり無くテレビとベッドとローテーブルのみが置かれていた。

「服、これで良いか?」

もう一つの部屋から出てきたミズキ君の手には、オレンジと黒のいかにもヤンキー調なジャージが握られていた。

「あ、ありがとう。...ミズキ君っぽい部屋だね」

「どーゆー意味だよ、それ」

少し睨んできた目から逃れるように俯くと、先に風呂入れとお風呂のスイッチを入れてくれた。
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