刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第38章 夏祭り
もう一度大倶利伽羅さんに線香花火を渡し着火する。
逸る心臓を落ち着かせるように花火に集中していたら…
「綺麗だな…」
「うん…綺麗、線香花火って繊細で儚くて…」
「違う、俺が言いたいのはあんたの事だ」
「へ?」
「似合ってる…」
「!!」
綺麗、似合ってる。確かにそんな言葉が聞こえた。彼のために着たこの浴衣の事を言っているのだろうか。数回瞬きをしてもう一度戸惑うように大倶利伽羅さんを見ると、彼の視線が私に向けられていた。バクンッと心臓が音をたてる。
「っ、…あ、ありがとう」
「だが今度は俺が着付ける。他の奴があんたの肌に触れるのは我慢ならない」
「え、伽羅ちゃん出来るの?」
「当たり前だ」
「そうなの!?知らなかった!…じゃあ次は伽羅ちゃんにお願いするね…あの、伽羅ちゃんの軽装も凄く恰好良い…」
「…そうか」
大倶利伽羅さんも着付けが出来るんだ。
今回はサプライズにしたくて歌仙にお願いしてしまったけど、大倶利伽羅さんが不機嫌そうに言うもんだから…なんだか可愛くてつい笑ってしまったらキッと睨まれた。
単純に褒められたことと嫉妬してくれたことが嬉しくて…気恥ずかしくもあり俯きながら団扇をパタパタと仰いでいたら、火花を咲かせていた線香花火はいつの間にかポトリと落ちていて。