刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第38章 夏祭り
その厭らしい舌の動きと、指から伝わってくる彼の温度に自然と甘い声が口から漏れる。更にあろうことか修業帰還後に抱かれた夜の事が頭に鮮明に思い出されて。
あの夜もこんな風に舐められた…
絡みつく舌が熱くて堪らなくてゾクリと体が反応してしまう。どんどん熱を帯びていく体に狼狽えていると、ドンッ!という大音響と共に夜空に丸く大きな金色の花火が打ち上げられた。
その音にハッと我に返り、慌てて手を引っ込めると同時に離れた唇からちゅっと可愛らしい音が鳴る。
「ば、ばかっここ外!」
恥ずかしさの余り悪態をついて空を見上げると、ふ、と少し笑ったような息遣いが聞こえた。
隣に花火の光に照らされた軽装姿の大倶利伽羅さんが居る。彼と一緒に見る花火はとても綺麗でこの一瞬一瞬がとても大切に思えた。
でも、華やかに彩る大輪の火花よりも隣にいる彼が何よりも美しく見えるのは惚れた弱みだろうか。いつになく穏やかな表情で空を見上げている端正な彼の横顔に見惚れていたら、不意に彼の顔がこちらに向けられた。
打ち上げられた色とりどりの花火が彼の金の瞳に映り込む。
なんて綺麗なんだろう…
すると、「…なんだ、物足りなかったか」と彼の瞳がすっと細められた。