刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第38章 夏祭り
乱ちゃんのウインクをしながら舌をペロっと出している含み笑いに、計画されていたことなんだとわかり途端に頬に熱が集まり、大倶利伽羅さんの手を握っている手の力が抜ける。
「大倶利伽羅、主を頼んだぞ」
一歩前に出て念を押す長谷部の後ろで手を振る皆に見送られながら、無言のまま大倶利伽羅さんに手を引かれて連れてこられたのは、参道から少し外れたところの高台にあるベンチだった。
花火が始まるまでもう少し時間があるのでベンチに座り、光忠が手渡してくれたビニール袋から焼きそばとたこ焼きを取り出した。直前に買ってくれたのかまだ温かい。
「伽羅ちゃんは何食べたい?」
「あんたはどれを食べたいんだ」
「どれでもいいよ?…全部美味しそうだから」
結局シェアすることにして、私の膝の上にはたこ焼き、大倶利伽羅さんは焼きそばを手に取った。
「美味しいね」
「ああ」
半分ほど食べて、今度は焼きそばとたこ焼きを交換する。
大倶利伽羅さんが先に口にした焼きそばをなんだか照れくささを感じながらも口にして、最後の一口を食べた時に「ついてる」と大倶利伽羅さんの声が聞こえて、褐色の手が伸びてきた。