刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第37章 修行
中庭を必死で走るもどんどん亀甲さんとの距離は縮まっていく。人間の小娘と刀剣男士では力の差は歴然だ。すぐに追い付かれるに決まっている。
すると、何者かに突然抱き上げられた。
「ひゃあっ!!」
「ぬしさま、静かに…」
何故か木の上にいた小狐丸が私を隠すように包み込んだかと思えば、人差し指を立て口元に持っていく仕草をした。
暫くすると「ご主人様ー!逃げても無駄ですよ。ぼくを縛り付けてくれるなら話は別だけどね!あぁ、考えただけでどうにかなりそうだよ!」と亀甲さんの興奮気味な声。
ギクリと体が硬直してしまうと、小狐丸は大丈夫です、と私に耳打ちした。
すると、バキバキバキッと音と共に亀甲さんの叫び声。
「くはぁっ、ぼくの秘密があ!」
どうやら、鶴丸が予め作ってくれていた落とし穴に見事落っこちたらしかった。
亀甲さんの言う秘密とは何だろうと考えながらも、いつも煙たがられている鶴丸の落とし穴がこんな形で役に立つとは思いもよらず、安堵してしまう。
「さ、あやつが無様に落ちている隙に参りましょう」
小狐丸は私を抱き上げたままひょいッと木から降り、執務室へと連れ帰ってくれた。