刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第37章 修行
私を軽々と抱っこして颯爽と走る彼の横顔は、極めているからか以前より大人びているように見えた。
後藤くんに抱えられながら亀甲さんの様子を確認すると、鯰尾くんと秋田くんがあっちに行きましたよ、と私達とは違う方向を指差している。だけど、それも無視して一直線にこちらに向かってくるのが見えて、またまたゾワリと鳥肌が立ってしまう始末。
「…ここまでくればさすがに大丈夫だろ、大将」
私を抱っこしたまま屋根から屋根を伝い、少し高い屋根の上にそっと降ろしてくれた後藤くんは、亀甲さんがいると思われる方向を眺めた後ふぅと一息つき腰を下ろした。流石…短刀なだけはある身のこなし。
「はー、ありがと…」
「なんとか撒けたみたいだな…暫くはここにいた方が安全だぜ!…って、ところで…大将は誰から逃げてたんだ?」
「そ、それがね…」
誰から逃げていた、と聞かれ「亀甲さん…」と答えたところでハッとした。
──私は一体何をしていた?
いくらご主人様が欲しいと言われて抱きつかれたからって、少し変わった刀だったからって、挨拶もろくにせずにひっぱたいた上に、顕現したばかりの彼から逃げて…
亀甲さんを呼んだのは紛れもなく私だ。彼は私に呼ばれてこの世界に来てくれたというのに。