刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第36章 嵐の夜
「あ、はい!一期さんいますっ」
「夕餉の準備が出来たので呼びに参りました。少し時間が早いですが、嵐の事を考慮して早めに夕餉を済ませることになったそうです」
「わかりました!直ぐ行きます」
そう簡潔に答えた後、今度は大倶利伽羅の方を見上げ「あの…伽羅ちゃん…」と小さい声で話しかける。
「なんだ…」
「あの…今夜…一期さんが粟田口の部屋で…」
大倶利伽羅が彼女を見下ろすと、眉尻を下げ視線を斜めに落とし恥ずかしそうに言葉を発する彼女の姿があった。
大倶利伽羅の内番服の上着の裾を握りしめ、俯いたままの彼女の言葉があまりにも聞き取りづらく、「どうした…?」と聞くものの、先程と同じく消え入りそうな声で言うので彼の耳には届かない。
そのまま次の言葉を待っていると「…な、なんでもないっもう行くね」と慌てて言い直されさっと背を向けられた。
そのまま振り返らずに部屋を出て行ってしまった彼女に「粟田口…?」と先程少しだけ聞き取れた単語を呟きながらも首を傾げつつ、大倶利伽羅もまた広間に向かって歩き出した。
夕餉を食べている間にも段々と風は強くなり、雨戸がガタガタと物音を立て、それと同時にぽつぽつと地面を叩く雨音が耳に届く。