刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第35章 お風呂での秘め事
ザアアア…
暫くするとシャワーの音。
酒が入っている彼女を風呂場に残し部屋に戻るわけにもいかず、何度目かの溜め息を吐き、自身の昂りを持て余しながらも大倶利伽羅は脱衣所で待機することにした。
…
…
おかしい…
彼女が風呂場に入っていったっきり、暫くは洗っている音が聞こえていたがその後はいやに静かだ。妙な違和感を感じ眉をひそめた。
「おい…、おい大丈夫か」
声を掛けたものの、暫く待っても返事はない。心配になり、さっきよりも大きい声で呼び掛けるがやはり返事は返ってこなかった。
中を覗くのは多少気が引けたが何かあってからでは遅い。そっと浴室のドアを開けると、そこには身体を洗っていた最中だったのか全身に泡をつけたまま洗い場でペタリと座り込み、浴槽にもたれ掛かっている彼女の姿…
「…ッ!」
背筋が凍りつくような感覚に襲われ直ぐ様駆け寄ると、切迫した状況とは似つかわしくない、随分穏やかで健やかな寝息が聞こえてきた。
「…寝て、いるのか…」
呆れたような、大倶利伽羅にしては珍しいなんとも間の抜けた声を出しその場で項垂れる。
──だから風呂はやめておけと言ったんだ。