刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第31章 近侍 大倶利伽羅
すぐ後ろで聞こえてくる低くて優しい声にまたもや心臓がキュンとときめいた。
はあ、これでは公私混同もいいとこだ。そうなりたくなくて、仕事中は二人っきりだとしても『伽羅ちゃん』て呼ばないようにしていて、あえてさん付けで呼ぶようにしているのに。
大倶利伽羅さんはちゃんと仕事をしてくれている。しっかりしなきゃ、と気を引き締めた。
「組み直します!」
「その方が良いだろうな」
急いで編成を組み直し、大倶利伽羅さんに確認してもらってからその他色々な仕事をこなしていく。
大倶利伽羅さんの近侍もそうだけど、今日はそれ以上に特別な日だった。
この本丸で初めての極の修行に前田くんが旅立つのだ。彼はここに来てくれた3振り目の刀で、この本丸初めての短刀。
修行に行けるように毎夜、夜戦組が池田屋の攻略を頑張ってくれた。
『主君、ぜひ、聞いていただきたいことがございます』と真剣にお話を持ち出された時は、遂にきたか、とその雰囲気で即座に理解した。
そして修行に行きたい、と伝えられた時は、すっかり逞しくなった姿に嬉しくもあり、なんだか寂しくもあり、複雑な心境だった。