刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第30章 ある日の出来事 4
彼女の腕が俺の首に回り、甘えるようにすがり付いてくるのが堪らない。
「ふ…っ…ん」
悩ましい声が重なる唇の隙間から漏れ、それすらも奪うように深く深く口付けた。
唾液が混じり合う音と、彼女の心地よい体温と甘い香りが俺の理性を少しずつ奪っていく…
隣の部屋には近侍の石切丸が寝ている。
こんな所を見られる訳にはいかない…わかってはいるが…夢中だった。
重なる唇が熱い…
絡む舌が熱い…
触れる身体が熱い…
だめだ、これ以上は…
戻れなくなる…
己の欲をなんとか抑え込み、絡み合う舌を離し、彼女の柔らかな唇を何度か食んだ後、この腕に強く抱き締め、名残惜しくも彼女から離れた。
唾液で濡れた唇と、トロリと蕩けたような彼女の眼差しに、胸に炎が灯っていくのをなんとか抑え込む。
「もう…戻る…起こして悪かった…」
そう言い残して、俺は足早に彼女の部屋を後にした。
自室に近付くにつれて話し声が聞こえた。思わず耳を澄ます。
「鶴さんまたそんなの作って!伽羅ちゃんに怒られても僕は知らないからね」
「なんでだ!?何が駄目なんだ?これくらいいいだろう」