刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第30章 ある日の出来事 4
「わかっている。勿論その件に関してはあいつにも伝えるつもりだ。それに…あいつがそれを拒むなら、俺は引き下がるつもりでいる」
「…そうか」
暫く俺を見据えていた山姥切は静かに納刀した。
「あんたに少しでも迷いがあるようなら切っていた…」
「迷うくらいなら元より手を出してはいない」
「ふ、それもそうか……大倶利伽羅、あんたの覚悟はわかった。だが、あいつを悲しませる事があってみろ。その時は俺があんたを許さないからな。それだけは覚えておけ」
そう言い残して山姥切は踵を返し去っていった。
再度歩みを進め彼女の部屋の前に着く。静かに扉を開けると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
起こさぬようにそっと頬に手を添え撫でると、俺の手に顔をすり寄せてくる。
すり寄せられた彼女の顔は、眠りながらも口元が笑みの形をとっている。
その幸せそうな寝顔に思わず口角があがった。
そして俺の気配に気付いたのか、彼女がうっすら目を開けた。
「おーくりから…?」
この月明かりだけの暗い中で、寝惚けながらも瞬時に俺の名を口にする彼女がとても愛おしい。