刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第30章 ある日の出来事 4
俺の言葉を聞いて山姥切は静かに抜刀し、その切っ先を俺の喉元に突き立てた。
普段は自信がなさそうに布を深く被っているが、今そこから覗く眼は真っ直ぐ俺を見据え殺気を放っている。さすが、初期刀…というべきか。
「こんな時間に主の所へ行く理由は一つ…それがどういう意味を為すのか分かっているんだろうな。あんたにそれだけの覚悟はあるのか、大倶利伽羅」
光忠は俺達の事を容認しているが、山姥切は違うらしい。恋仲になることには一切の反対はなかったみたいだが、体を契る、となれば話が変わってくる、ということか。
悪いが引くつもりはない。俺はその眼を真っ直ぐ見つめ返した。
「あいつに俺の想いを伝えた時から、あいつが俺の想いを受け止めてくれた時から、とっくに覚悟はできている」
「付喪神であるあんたと人間である主が、互いを想い合い、それを望んだ上で体を契れば、あんたと主の魂が結ばれる事になる。婚姻とは違って強固ではないが、少なからず縁で繋がり離れられないことにはなるだろう。それをわかっている上で行くんだな」
今夜は一目会いに行くだけだが、いずれ彼女を貰い受けるつもりでいるのは確かだ。